論理的思考を手助けする5つのツールと論理的思考力の身に付け方
こんにちは、爽です。皆さん、いかがお過ごしでしょうか?
前回の記事でそもそも論理的思考力とは何かということと、論理的思考力が必要とされる理由についてご紹介しました。
しかし「論理的思考力が必要なことは分かったけど、じゃあ実際どうやったらいいの?」とか「どうやって身に付ければいいの?」とか実践的なところも気になりますよね。
ということで、今回は論理的思考を手助けするツールと論理的思考の身に付け方を図と具体例を交えながらお伝えします!
■この記事の対象読者
・論理的思考を実践する為の具体的な方法を知りたい方
・論理的思考の身に付け方を知りたい方
それではどうぞ!
論理的思考力とは
まず初めに、論理的思考力とはどのようなものでしょうか?
不意に聞かれると答えに窮すると思います。
私なりの言葉で表現すると、論理的思考力とは
「①物事の因果関係を構造的に捉えた上で、②結論を導く為の筋道を矛盾なく整理し、③その整理した結果を分かりやすく相手に伝達する能力」であると考えます。
具体的にどのようなものかは前回の記事でご紹介しているので参考にしてみてください。
論理的思考を手助けする5つのツール
では、ここから論理的思考を進めるときの手助けとなるツールをご紹介していきます。
以下にご紹介する5つのツールを知っておき、PCや紙に書いて思考することで、論理的なコミュニケーションと論理的な問題解決が可能となります。
ツール①:ピラミッド
まずご紹介したいのがピラミッドというツールです。
これはコミュニケーションの為のツールで、論理的な話を作り上げる際の手助けになるという点で非常に有用なツールです。
具体的な使い所として、ピラミッドはある程度伝えたいことが見えている為、話の筋道を整理したいときに用います。
例えば、具体例としてあなたが転職すべきかどうかを悩んでいるとし、私はあなたにコンサルタント職をおすすめする前提で図1のそれぞれの要素について説明していきます。
結論
先述の通り、ピラミッドをコミュニケーションツールとして使う場合、ある程度結論が見えている場合が多いです。
この場合の結論は明らかで「あなたはコンサルタント職に転職すべき」ですね。
論点
次に論点を考えましょう。
論点とは英語ではイシューとも呼ばれ、「これから何について話をするのか」のことです。
また、論点は必ず疑問文で終わる必要があります。
例えば、私があなたに「転職について話をしたいのですが、」と話を切り出した場合、転職の時期についての話をしたいのか、転職をする動機について聞きたいのか、それとも他の話なのか、モヤモヤしたしたまま私の話を聞くことになります。
従って、この場合は「あなたがどの職種に転職すべきかですが、」を伝えるといいです。
こうすると聞き手側は最初に語り手の話の意図を掴むことができ、その後の話も違和感なく聞くことができます。
理由
次は結論を裏付けるための理由を考えます。
理由を考えるときに1番やってはいけないことは、自分の思いを理由とすることです。これは本当に起こりがちで、私もよくやってしまっていました。
例えば、コンサルタント職をおすすめする理由が「私の経験上、あなたに向いていると思うから」と思いだけを説明された場合、全く納得感がありませんよね。
納得感を得る為には数字やデータ、一般常識、事例などの客観的事実を根拠とする必要があります。
また、理由は1つだけでは頼りないので、図1のように最低でも理由は3つはあった方がいいと思います。
ここではコンサルタント職をおすすめする理由を以下の記事で執筆したように、「自己成長ができる為」、「グローバルに活躍できる為」、「高年収である為」の3つとしておきましょう。
で、結論を支える理由として弱いと感じるものがあれば、理由を説明する理由も説明した方がいいです。
例えば、コンサルタント職をおすすめする理由として「自己成長ができる」だけではなんとなく理由として弱い感じがするので、数字やデータ、事例などで更に補足すると良いです。
次のアクション
最後は誰がどうすべきか、次の行動を提案する必要があります。
論理的に結論と理由を述べた後、「で、誰がどうするの?」とツッコミを入れたくなる報告・連絡・相談は本当にたくさんあります。
例えばこの場合は、「あなたさえ良ければコンサルタント職に転職する為の方法をお伝えしますがよろしいでしょうか?」のような感じになると思います。
文章化
あとは今までまとめたことを文章に落とし込むだけです。以下のような感じになると思います。
■論点
あなたがどの職種に転職すべきかですが、
■結論
あなたはコンサルタント職に転職すべきです。
■理由1
なぜなら、コンサルタントは圧倒的に成長できるからです。実際、私も働く中で高い資料作成能力や論理的思考力、ITスキルが身に付きました。それに加えて、私の同僚は更に高いコミュニケーション能力も身に付けています。よって、成長意欲が高いあなたにピッタリです。
■理由2
2点目の理由は、グローバルに活躍できる環境がある為です。当社のコンサルタント職の〜%は海外案件に携わっていることから、意欲があれば世界を股にかけて働けるチャンスはあります。
■理由3
3点目の理由は、高年収が見込めることです。コンサルタント職の平均年収は〜万円となっており、これは東京都20代、30代の平均年収をはるかに上回っています。
■次のアクション
従って、あなたさえ良ければコンサルタント職に転職する為の方法をお伝えしますがよろしいでしょうか?
いかがでしょうか?
だいぶ論理的に見える文章を作り上げられていることを実感して頂けたのではないでしょうか。
このように、ピラミッドは円滑なコミュニケーションを作り上げる為のツールとして使うことができます。
ツール②:演繹法・帰納法
次は演繹法と帰納法です。
演繹法と帰納法はどちらも結論と理由を繋げるときのもととなる考え方です。
演繹法
演繹法とは以下のように説明できます。
社内ルールや一般王指揮、物理法則などの前提(ルール・基準)があり、怒った事実がその前提に当てはまるために、何らかの結論が断定できるというもの
引用元:コクヨの5ステップかんたんロジカルシンキング
イメージとしては図2の左の通り、「ある事実とそれが当てはまるルールを直列で繋げて結論を導く」方法です。
例えば、社内に「一定以上の社内評価を得ている場合、次の人事で管理職に昇進できる」というルールがあるとします。(前提)
そして、Aさんは管理職に昇進する為に一定以上の社内評価を得ています。(事実)
従って、「Aさんは次の人事で管理職に昇進できます。(結論)」というような具合です。
このように事実をあるルールに照らし合わせて結論づける方法を演繹法と言います。
演繹法を用いる時に気をつけることは、前提(ルール・基準)を普遍的なもの、もしくは相手と合意が取れているものにしないと、誤った結論を導いてしまったり、論理が破綻してしまうことです。
例えば、日本産の家電は今となっては世界的にも存在感はありませんが、「まだまだ日本産の家電は世界的にも圧倒的な評価を得ている」という前提を採用してしまうと、「B社が新しく売り出した家電は世界で通用するに決まっている」という誤った結論を導いてしまいます。
帰納法
一方で帰納法とは以下のように説明できます。
複数の事実を列挙して共通点を見つけ、結論を導く方法
引用元:コクヨの5ステップかんたんロジカルシンキング
イメージとしては図2の右の通り、「複数の事実を並列で並べて共通点から結論を導く」方法です。
ピラミッドも基本的には帰納法で考えますし、ビジネスではこちらを使うことが多いのではないでしょうか。
帰納法は馴染み深く、ある程度の納得感が出るので使いやすいのですが、使う時に気をつけることとしては論者次第で結論が変わるということと反例に弱いことです。
前者については、コロナ禍においてNYダウが30,000ドルを更新し、日経平均も3万円に迫りそうな勢いですが、この上昇トレンドは今後も続くという結論、もしくはバブルであるという結論、話し手次第でどちらにも取りうるということです。
この場合は、いずれかの結論を語った後にもう一方は結論となり得ない根拠も用意しておいた方がいいです。
後者については、ピラミッドのところでコンサルタント職は高年収が見込めるという理由を述べましたが、残念ながらそれほど給料が出ないコンサルファームもあるかもしれません。
その場合は、それほど高年収が見込めないコンサルファームについてはあらかじめピックアップしておき、例外として扱うことを事前に伝えておく必要があります。
ツール③:MECE
次はMECEです。
MECEはMutually Exclusive, Collectively Exhaustiveの略で、日本語に直すと「漏れなく、ダブりなく」という意味です。ミーシーと読みます。
この考え方は、論理的思考には欠かせない考え方で、論理的なコミュニケーションと論理的な問題解決、どちらを実践する時にも必須です。
例えば、コンサルタント職をおすすめする理由として、「年収が高い」、「福利厚生が手厚い」、「研修制度が充実」という理由を説明された場合、これらはいずれも「入社後の待遇面」でのみの理由となっており、なんとなく納得感に欠けますよね。
これが「漏れもあって、ダブりがある状態」です。
逆に例として挙げているように「自己成長ができる為」、「グローバルに活躍できる為」、「高年収である為」と説明された場合、それぞれ「入社後のイメージ」と「労働環境」と「入社後の待遇面」が説明されているので、先程の例よりは「漏れなく、ダブりがない」感じがすると思います。
以上のような考え方がMECEですが、MECEする為にはある程度の納得感で理由を切り分ける必要があります。
そんなある程度の納得感を持って、理由を切り分ける為の代表的なツールがフレームワークです。
フレームワーク
フレームワークは「ある考え方に対する枠組み」と表現でき、フレームワークの考え方自体がMECEに基づいているので、これを用いることで簡単にMECEの為の切り口を得ることができます。
フレームワークに関する書籍や情報は世の中に数多あり、私がこの記事で紹介している「コクヨの5ステップかんたんロジカルシンキング」にも掲載されていますが、例えば以下のようなものです。
5W1H
4P:Product(製品),Promotion(広告),Price(値段),Place(チャネル)
3C:Company(自社),Competitor(他者),Customer(市場)
PEST:Political(政治),Economical(経済),Social(社会),Technological(社会)
QCD:Quality(品質),Cost(費用),Delivery(納期)
売上=単価×個数
利益=売上-利益
フレームワークを用いることで、「漏れなく、ダブりなく」ピラミッドの理由や後述するツリーの原因と解決策を導くことができるので、上司からの「それMECEじゃないよね」というツッコミを回避することができます!
ツール④:ツリー
次はツリーで、これは問題の根本原因の究明と根本原因に対する解決策の洗い出しの為に用います。
原因を究明するときに使うツリーがWhyツリーで解決策を洗い出すためのツリーがHowツリーです。
例えば、前の記事でも書いたように、ある商品の売上が伸びないという問題について、まず原因をMECEを意識しながら深堀していき、根本的な原因を特定できたら、解決策をMECEで洗い出して最適な手段を選択するという具合です。
図3の例ですと根本原因である原因B-2を究明し、それを解決する為の解決策を洗い出し、最終的に解決策B-2を選択するというイメージです。
WhyツリーとHowツリーを作る上で共通して気をつけたいこととしては、常に仮説思考しながら深堀していくということです。
仮説思考
仮説思考とは「ある程度、この辺りが怪しいのでは?」と見込みをつけながら考える思考法です。
ツリーは深く掘れば掘るほど、選択肢が増えるので、全てバカ正直にMECEしていったら時間が足りません。
そこで、仮説思考で予め自分なりの正解尺度を持ってツリーを作っていきます。
そうすれば、自分が想定した仮説に対する答えに早く辿り着くことができますし、例え想定した仮説が外れであったとしても時間のロスが少ないので、また次の想定を持って思考を進めることができます。
このように仮説思考でトライアンドエラーを繰り返しながら思考と検証を繰り返すことが肝要です。
他にもツリーを作成する上で気をつけたほうがいいことがあるのですが、ちょっと量が多いので、ここは次の機会に譲ります。
ツール⑤:マトリクス
最後はマトリクスです。
マトリクスは評価軸と選択肢を並べて結論を出したい時に用います。
マトリクス表
マトリクス表は評価軸が3つ以上の場合で高度な分析をしたい場合に使います。
Excelなんかでもよく作りますよね。
例えば、複数社から内々定を貰った場合、どの企業に入社すべきか絞り込みたいとしましょう。
その場合、まずあなたの就活の軸と企業を洗い出します。
そして、その中でも特に優先したい軸を選び出したらそれを内々定先の企業とのマトリクスにし、○△×をつけて重み付けをした後、点数を比較すればどの企業が最もあなたに合っているかを確認できるいうことです。
例えば以下のような感じでマトリクスを作って、例えば○だったら3点、△だったら1点、×だったら0点みたいに自分で記号の重み付けを決定し、合計点数を算出します。
軸/企業 | A社 | B社 | C社 |
---|---|---|---|
給与 | |||
ブランド・知名度 | |||
安定性・財務の健全性 | |||
社風 | |||
福利厚生 | |||
技術が身に付くかどうか | |||
リモート対応 | |||
フレックスの採用有無 | |||
転勤の有無 | |||
合計点数 |
(スペースの都合上、図4と比べて軸と選択肢が逆)
4象限のマトリクス
4象限のマトリクスは評価軸が2つの場合で直感的な分析をしたい場合に使います。
例えば、上記の「あなたの軸と企業のマトリクス」の「給与」と「福利厚生」は一言で「待遇」と表現できますよね。
また、「リモート対応」、「フレックスの採用有無」、「転勤の有無」は「働きやすさ」と表現できそうです。
この2つを縦と横の評価軸にとり、その軸上に企業をプロットしてどの企業が良さそうか直感的に把握します。
論理的思考力の身に付け方
では最後に論理的思考力をどのように身に付ければ良いかについて私なりの意見をお伝えします。
鍛え方①:論理的思考力のノウハウをインプットする
まずはこの記事の末尾にご紹介している本や他の本、媒体でも何でも良いので、論理的思考力について更にインプットすることが必要です。
基本的な考え方やツールはこの記事や以前の記事を見ていただければ分かりますが、情報量としては明らかに不足しています。
従って、最低でも1冊は論理的思考力についての書籍や媒体を読破した方が良いです。
鍛え方②:インプットした知識をアウトプットする
知識を身に付けたら、あとはビジネスでも日常生活でもとりあえず使ってみることです。
何事もそうですが知識は使わなければ定着しませんし、特に論理的思考力というものはハウツー本を読んだからといって、一朝一夕で身につくものではないと思っています。
例えば、人と話す前にピラミッドで話の構成を自分で作ったり、ある物事を決める場でホワイトボードにマトリックスを書いてみたりすると良いと思います。
最初は慣れていないので時間がかかりますが、使っていくうちに慣れていき、そのうちにツールを自分の引き出しとして自然に使えるようになると思います。
鍛え方③:意図的に訓練する
また、そもそも考えることが苦手な方もいると思うので、そういう方には意図的に訓練する方法もあります。
例えば、私も考えることが苦手なタイプの人間でしたが、ゼロ秒思考 頭がよくなる世界一シンプルなトレーニングという本で思考の訓練をすることで考えることに対する苦手意識がなくなりました。
赤羽雄二 (著)
簡単に内容を要約すると、この本では自分が思い付いた論点に対する考えを1分につき1つのメモを書いていき、それを毎日10サイクル繰り返すことで思考を訓練でき、やがては「ゼロ秒思考」が身に付くといったことが紹介されています。
非常にシンプルな訓練方法ですが、とにかく毎日欠かさず実施するということが1番のハードルなのではないかなと思います。
ただ、私も1ヶ月ほどやってみましたが、なんとなく思考がスッキリしてゼロ秒とは言えないものの、考えが比較的早く浮かぶようになりました。
また、マッキンゼー出身の筆者ということもあり、文章も論理的で読みやすいです。
参考書籍
この記事の参考書籍は以下の2冊です。
どちらも論理的思考力とは何かについて、分かりやすく記載されているので良ければ参考にしてみてください。
まとめ
ということで、今回は論理的思考を手助けするツールと論理的思考の身に付け方を図と具体例を交えながらお伝えしてみました。
執筆してきた通り、論理的思考力はまずその考え方を知った上で、日々実践していくことで身に付いていく能力です。
また、この能力は先天的なものではないので、意識して使ってみたり訓練することで必ず身に付けられます。
この記事が皆さんの論理的思考力への興味とそれを身に付けるきっかけになれば幸いです。